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宮崎家庭裁判所延岡支部 昭和43年(少)7号 決定 1968年7月26日

本人 G・S(昭二二・二・四生)

主文

右GSを特別少年院に送致する。

その収容期間を一年とする。

理由

(ぐ犯事実)

G・S(以下少年という)は当庁昭和四二年(少)第二一号詐欺保護事件により同年二月二日宮崎保護観察所の保護観察に付する旨の決定をうけ、その保護観察中のところ、少年に反省の情がなく特別遵守事項(一、飲酒遊興を慎み保護者の言付けを素直に守ること、二、早く就職し真面目に働くこと、三、月二回保護司宅へ行きその指導を受けること)をいずれも守らず、飲酒遊興に耽つて放縦な生活を送りバー等に負債を作つては保護者に弁済させる一方外泊などして家庭に寄り附かず、又職業には永続性が全くなく、更に月二回の担当保護司との面接も形式的で昭和四二年八月以後は家出、居所不明となつたため、このまま放置すると再犯の虞れがあり、同年一〇月一四日付で宮崎保護観察所長より犯罪者予防更生法四二条一項の通告があつたもので、当裁判所は調査審判の結果昭和四三年二月一日少年を当庁調査官舌間吉和の試験観察に付する旨の決定をなしたが、なおも少年の生活態度は改まらず、前記放縦な生活を続け、支払うべき金銭を持たずにバー、飲み屋で飲酒して借金を作り、同年四月二二日宮崎保護観察所より肩書住居の保護会に委託され職場開拓等極力指導を受けても同様であつたため、このまま放置すればその性格、環境に照らして再犯の虞れがあり、同年六月二五日付で同保護観察所長より再度同法同条同項の通告がなされたものである。

(適条)

犯罪者予防更生法四二条一、二項

少年法三条一項三号、二四条一項三号

少年審判規則三七条一項

少年院法二条四項

(処遇の理由)

一、資質面の問題

少年は昭和四〇年三月○○高校卒業後同年四月○○○○大学工学部土木科に入学したが、同年一〇月頃より著しく生活が乱れ、パチンコ店、マージャン屋、ダンスホール、喫茶店に出入りし、飲食店にも多額の借金を作つて昭和四一年五月頃からは大学に行かず、保護者は少年の借金を弁済して同年九月少年を延岡へ連れ帰つたがその折合いは悪化し、同月○○日より翌四二年一月○○日迄少年は七回に亘り無銭飲食による詐欺を行い心身の鑑別を受けて保護観察に付された。同年八月○○日○○町で無銭飲食をし、警察で調べを受けたほか、その後の経過は前記のとおりであり同種犯罪を繰り返す傾向は非常に強い。

知能は平均よりやや低く、自己中心的、表面的で社会道徳観念は貧困で社会規範への配慮に乏しい。情意の安定に欠けその場限りの行動に走りやすく、自己中心的で精神病質の疑いが持たれる。

従つてこの際本人の責任についての自覚を保進することが必要である。(なお宮崎少年鑑別所作成の第二回鑑別結果報告は施設での矯正教育の効果は余り期待しえない、教育刑による効果に期待したいとしている。)

二、保護面の問題

保護者は既に一〇万円以上少年の借金の後始末をしており、現状では保護の意欲を失い少年との間の意思の疎通は全く欠けている。

保護観察の効果がないことは周囲の強力な善導の努力にも拘らず、少年が前記の状態を続けたことから既に明らかであり当審判廷において少年は「肩書職業に就いたので今回からは真面目に働く」というが就職後の期間は僅か一二日間で今迄の同人の稼働状態、度々の誓約違反から到底これを信用しえない。

又担当保護観察官石田陽も少年に反省の色がみられないこと、少年の性格の矯正改善と併せて家庭環境を調整するため必要があることから少年を矯正施設へ収容する外ないと当審判廷で供述している。

三、以上の事実は調査、審判の結果及び昭和四三年(少)第四〇七号少年保護事件記録の少年の保護観察官に対する質問調書により認められるところ、少年は現在二一歳であり、他の成人者との均衡、少年が罪を犯した場合には検察官が直ちに公訴を提起しうること等から、これを保護処分に付してその身体の自由を拘束するには慎重であるべきことは当然であるけれども、少年が成人直前に保護観察に付されたこと、その極めて強い非行性及び家庭の環境を併せ考え更に犯罪者予防更生法三三条三項但書、四二条一項二項の趣旨も配慮すれば、この際少年を施設に収容して規律ある生活の中で職業補導矯正教育を行い、その自己理解を深めさせると共に反省の機会を与えることが少年の将来の為に適切であり、かつ止むを得ないと判断し、右の期間を一年とするのが相当であると認めるので前記の法令を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 前川鉄郎)

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